星野 郁さん インタビュー

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「日本とブラジル、両方の愛情を知れたことが幸せ」
- 星野郁さん インタビュー

Story of Kaoru Hoshino
 

 
 

ある日「逢いたくばのウェブサイトを拝見して、とても共感して・・・」と、事務局へ来てくださった星野 郁さん。
小学生から中学生時代という、多感な時期にブラジルで生きていた星野さんに、
当時のお話や「逢いたくば」についてのお話をうかがいました。
 

 
DSC_1717.jpgphoto by Hitoshi Yagi 
 

星野さんは、 小学校1年生から中学を卒業するまで、
ブラジルに住んでいたそうです。
 
「その頃は日本企業の進出がさかんな時期で、私も両親の仕事の都合でサンパウロに住んでいました。
日系人の方々との交流は、リベルダージ(※サンパウロの中心部に位置する日本人街)へ日本食の買い出しに行ったり、
日系ファミリーの娘さんとお友達になったり、ご自宅に招待していただいたりするなかで生まれました」
 

 
「同じ日本人のようでも、カルチャー(文化)の違いがあったりして、
とても刺激的でしたね」と言ってほほえむ星野さん。
おとなになった今、振り返ってみてのお気持ちを聞かせてくださいました。
 
「ブラジルにももちろん、良いところもあれば、そうでないところもあったと思います。
それでも今ふりかえって『楽しかったな』と思えるのは、
やはり日系人の方々がいてくれたからだと思うんです。
誰がどう、なにをしてくれたという細かい記憶はもう薄いけれど・・・
すごく居心地よくいられたり、『ブラジル大好きだな』という気持ちで帰って来れたのは、
日系の方々があちらに土台をつくってくださっていたおかげのような気がします」
 
そんな星野さんは、このホームページで八木の写真を見て、
当時のことを思い出し、感動してくださったそうです。
 
「日系人全体、というよりも、ひとりひとりにスポットを当てて、
『一人の人間』を写しているように思いました。
ひとりずつがとてもクリアに浮き出ているような感じで、それがたまたま日系人だった、というような・・・」
 
多感な少女時代をブラジルで生きたからこそ、わかる想いがある。
 
「帰国したばかりの頃は(日本の環境に合わせようと)やはり無理をしていたかな、とも思います。
最近になって、『元の感覚に戻りたい』・・・思い出そう、と思うようになったんです。
 
ブラジルは愛情がとても深いので、日本では、気持ちの部分でときおりクールすぎるように感じることがあったりして・・・
かつての・・・昔の日本はそうではなかったのかもしれないけれど、
少なくとも私は、そう感じることがあったのが正直なところです。
 
日本にいて欠けたものを、ブラジルのもので補充したくなるんです。
そして、ブラジルにいたときに感じた日本の良さを、また補充したくなる・・・
そんな行ったり来たりする複雑な環境や、心の動きがあるんだと思います」
 

 
「だけど、それが私の人生の意味なのかな、と思ったりもするんです」
 
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そう言って笑顔を見せてくれた星野さん。
 
「自分」 というものがつくられてゆく時期に、まったく別の環境にいるということ。
それは経験した人にしかわからないことかもしれません。
 
ただ、どこにいても同じこと。
 
それは「同じ人間である」ということ。
 
星野さんが八木の写真を見て、「全体」ではなく「個」を感じてくださったこと。
そして、話してくださった日系の方々の思い出。
 
それは、
どんな場所にいても、どんな場所で育っても、愛がすべてを決めるということなのだと思います。
 
ブラジルで育っても、日本で育っても、出逢う人は同じ人間。
悪い人もいれば、良い人もいる。
カテゴリーに分けたり、線を引いているのは私たちでしかないのです。
 
たとえ言葉が違っても、肌の色が違っても、文化が違っても、
相手への思いやりやこころは、必ず通じている。
だから今こうして、星野さんは
「とても楽しかった」と、はっきり言えるのだと感じました。
 
「逢いたくば」は、ブラジル日系人の方々にフォーカスしたプロジェクトです。
しかし八木は、常にカメラの向こう側に、被写体個人の人生を見ているのかもしれません。
 
もう、日系人だとか、なんだとか、すべてを分けることをせず、同じように・・・
いつも仲良く笑い合っている友達と同じように、相手を見つめることができれば、きっともっと、たくさんの人と笑い合うことができる。
 
星野さんのお話をうかがって、そう感じました。
 

 
「また、ブラジルへ行きたいです」という星野さん。
 
世界がもっともっと身近になり、
大切な人へ、もっともっと簡単に逢えたら・・・
 
そんな世界は、もう身近かもしれません。
 
私たちは、まずすぐそばにいる人を大切にしながら、
その日を楽しみに生きてみるのも、幸せかもしれません。
 
 
 
星野さん、
お話を聞かせてくださって、本当にありがとうございました!
 
 
 
 
 
interview&text by : yumiko murata
Photo by:Hitoshi Yagi