田島 美奈子さんの作品をブラジルへ!
Story of Minako Tajima's"Chopsticks putting&Beanbag"
今年4月、東京・小金井市の江戸東京たてもの園にて、八木仁志の写真展が行われました。
最終日近くに、一人の女性の方がお客様でいらっしゃいました。
お名前は田島 美奈子さん。
美奈子さんは、ふたつの箱を持って、いらっしゃいました。
「この間も来たんです」
美奈子さんは、本当に何かを伝えたい様子でした。
私は、何か違うものを感じて、とてもお話を聞きたくなりました。
「今年の3月、旅行でブラジルへ行きました。
その時、ブラジルでよくしてくださった方達のことが忘れられないんです。
こちらで写真展を拝見して、もういてもたってもいられなくて・・・
なにか私にできることはないかと思ったんです」
そう言うと、美奈子さんは箱を開けて、
作ってきたものを見せてくださいました。
「趣味で作っているもので、材料もありったけ使って作りました。
綺麗な布もあまり無かったし、数も少ないけれど・・・。
プレゼントする時に入れられればと思って、小さい袋も持ってきました。
喜んでもらえるかわからないけれど・・・」
それが、この作品です。
Photo by Hitoshi Yagi
「本当は直接私がブラジルへ行って、一人ずつに渡したいです。
本当にご苦労なさったのだと思います。
これからもずっとずっと幸せが続いてほしいし、幸せになってくださいと言いたいんです」
美奈子さんは、本当に、本当に、
心の底からそう思っているようでした。
私は、ものすごく感動しました。
☆
「逢いたくば」プロジェクトは、始めから大義名分を掲げて始めたプロジェクトではありません。
このプロジェクトの始まりは、
写真家の八木仁志が、自分の従兄弟の死に立ち会えず、
どうしてもお墓参りをしたいとブラジルに行った時からです。
そして日系人の方々の存在を知り、中川トミさんを知り、
撮影をした八木は、それを被写体の方々へプレゼントし、
それで喜んでもらえたら、それで良かったと何度も言います。
始めこそ「写真を見て欲しいからたくさんの場所で開催したい」と、
何カ所かお願いさせて頂いた場所もありました。
けれど、開催にはお金がかかります。
2カ所の財団と、一覧に載っている寄付をのぞいて、全てはスタッフの資金を使って行っています。
これ以上の数は、もう出来ないでしょう。
現在決定している写真展は全て、いただいたお話です。
ブラジルへ行くことも、本国から呼んでいただいたからです。
八木は、誰かの想いに答えることが好きな人です。
依頼をされると断れないタイプです。
その気持ちが強すぎて大変な時もあるみたいです。
見ているとわかります。
けれど、それこそが逢いたくばの核をぐらつかせないものになっているのでしょう。
名誉が欲しいとか名を売りたいとか、
そんな事を思ってやっているわけではないし、
間違ったことをするぐらいならいつでもやめるべきだと私は思っています。
プロジェクトが大きくなるにつれて、
いろいろな人が現れ、いろいろな人と知り合い、
いろいろな話が持ち込まれます。
けれど、どんな思いで来ているのか・・・
それはその人の目と、纏っている空気で大体わかるのです。
☆
美奈子さんは本当に純粋でした。
写真展を見て、感動し、何かできることはないかと、
言ってしまえば得体の知れないプロジェクトかも知れない私達のところへ、
作品をたくさん持ってきてくださいました。
自分の時間というものを何かに使う時、
そこに純粋な思いが賭けられる人はどのくらいいるのでしょう。
大体がお給料のための仕事であったり、
名誉のためであったり、
目標のための行動であったりするのでしょう。
誰かのために、
世界のために、
見ず知らずの人のために動ける人は、
一体どのくらいいるのでしょう。
私は自分が恥ずかしくなりました。
私にはここまで出来るのだろうか。
☆
「逢いたくば」は、一般の人も、プロの人も関係ありません。
地位も名誉も立場も関係ありません。
その人自身に全てがあるはずです。
美奈子さんの作品は、美奈子さんの強い想いといっしょに、
ブラジルの方々のところへ責任を持ってプレゼントしてきます!
「ずっと幸せが続いて欲しい」と言い切った時の美奈子さんの顔を、
絶対に忘れずに渡してきたいと思います。
美奈子さん、本当にありがとうございました!!!
text by : yumi